03.居内加代子
 
 那智が校内をひと回り見て帰ってくると、クラスの屋台は異次元と化していた。
「なに、あれ……」
 思わず那智はつぶやく。
 そこにはクラスメイト居内加代子がいた。
 そこまではいい。ただいただけなら驚きはしない。
 彼女はやたらとカラフル、且つヒラヒラした服に、頭には白いカチューシャ――いった
いどこの二次元世界から飛び出してきたウェイトレスですか?といった衣装だ。
 そんな姿で、加代子はたこ焼きを焼いていた。
「ああ、あれね。家庭科部で喫茶店やってるんだって」
 唖然としている那智の横に宮里晶が来て教えてくれた。なるほど。彼女は家庭科部だっ
たらしい。
「で、ウェイトレスの格好のままで戻ってきたわけ?」
「そゆこと」
「そりゃ強烈だな」
 そちらに行けばあの格好も周りに溶け込むのだろうが、たこ焼き屋では単なる不思議時
空製造器である。
 と、そこで彼女が那智に気づき、こちらに寄ってきた。そして、そばまで来ると片手を
上げる。
「や、やあ……」
 つられて那智も手を上げて応える。
 パン――
 上げた互いの掌を打ち合って小気味良い音が響いた。ハイタッチだ。
 そして、そのまま彼女はスタスタと去っていく。
「あら、もう交替の時間ね」
「………」
 居内加代子が去った後もやっぱりそこは不思議時空のままだった。
 
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