06.宮里晶
そのとき、1年7組のたこ焼き屋はこの上なく暇だった。
「暇だな」
「ああ……」
ほとんど客の来ない屋台で店番の男子生徒ふたりが喋っている。
「何が悪いんだろ?」
「やっぱアレじゃね? 遠矢と千秋がふたりともいなくなったからだろ」
「まあ、俺もそんな気がしてた……」
そう言ってため息を吐く。
確かにあのふたりのおかげで予想外に繁盛していた。メインの客層は女の子、それもど
うやら学園の生徒だけでなく、よそからも来ているようだった。。
「でもなぁ、俺、原因はそれだけじゃないと思うんだよ」
トーンを落として言う。
と、そのとき――
「うけけけけけ……」
後ろで奇声が上がった。
彼らは、びくっと跳び上がった後、恐る恐る振り返る。
そこにはまな板に向かう宮里晶がいた。包丁を握りしめ、終始笑顔で生ダコを切り刻ん
でいる。そして、時折、今のように奇声を上げるのだ。その姿は獲物を捕まえた後、仕事
に励む山姥のようである。
「絶対、宮里も原因のひとつだと思う」
「否定はしない。……あ、今、2年の女の子がUターンした」
「おい、知ってるか。殺人鬼ってのはな、最初、動物虐待からはじまるらしいぞ。宮里だっ
たら犬猫すっ飛ばして、一気に人間にステップアップしそうじゃね?」
「怖いこと言うなよ」
ふたりは極力うしろを見ないようにして会話を続ける。
「でさ、刻一刻と増え続けるタコの欠片、どーするよ?」
「さあ……?」
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